生活
君の明日は
あいも変わらず一色足らない虹色のようで
胡乱な影が埋め尽くしている
珈琲屋を血眼に探す
19時のモーニングの需要を考える
本屋で立読みをすると
ぼんやりした頭にひらひらと文字が霞んでいく
朝に会えるはずだった鳥を
互い違いに埋めていくヒヤシンスを
懐古主義の鈍く光るスプーンで掬うと
車厘を踏台にしたホイップが煙の中に揺れる
角度を鋭敏に捉えると
握りの甘い苦味が
当直の赤髪の弁当売りを
なにか同情とも哀れみとも応援とも
一目惚れとも違う感情で
視界の端っこで
尻目で
見切れて
いってしまったあと
昔住んでいた木造の一軒家の
鍵を開ける感触を思い出した
どういうはずか
布丁を探していたはずなのに
淡い幻想は一瞬で食べ尽くされてしまうのに
そのことで今や昨日、3年後が変わるはずもないのに
家の書棚に蟷螂を見つけた時のような
虚を眺める実像としての動きに
疲れたタイル地のコバルトブルーを添える
そんな行為に見出すのは
シュールさの怠慢ではなく
ただ或るはずの後ろめたさだ
Gペンで直線を走らせるように
定義やDNA
原子の歪みを正せたなら
溝に落ちた符丁など気にすることもなく
満遍なく凸凹をならして
マッチングサービスの左を無くし
乳飲子の薬指に南蛮漬の唐辛子をはめてあげるのに
雑草に名前があるように
雑念にも名があるのなら
図録を買って見せびらかしたい
本を繰る感触に
3つの雑念がある事を教えたい
橙色のラムプに
人間は今もノスタルジーと破壊を見るか
主で或るはずのパドルに
日光浴の最終的な局面に
輪廻82回目の最中に
漉餡か粒餡か決めかねている人指し指に
細部に宿るはずのものは
大局にはいないのか
概念は内面の許容量次第で
数字の1の大きさは
万人に平等ではないように
パイソンを躊躇なく屠ることは
プログラミングされていない
生活
いかされることのない痛みや喜びを
それと定義づけることは浅はかにも思える
しかし往々にして
我らが先祖の背中には
いつも石膏板の穴のような暗闇があって
贅沢な迷いをまっすぐ進みながら
囀りに耳を貸すことも
肩を組んで笑い泣き
噛み締めた何かを
舐め尽くすこともできる
行為を宥め賺し
冷やした生垣に刺さる西日が
もう少しズレてくれればいいと
願うことで
今日が終わってしまうのもよいのかもしれない
そんな日は
珈琲でも飲まなければ
明日にかかる過去との分岐点が
錆びたカラビナのように見えてしまって
やりきれない
もう少し純度の高い
距離と度数があれば
測りきれない羅列を
迎え入れられるのに
ソーサーにカップを置く音が聞こえる
添えられた鈍く光る明日が
過去と同じ目をしていたはずで
フェリー乗り場に佇むように
水面を反射させていた