セリヌンティウスが
欲しいと思った
僕は
昨日
斜め向かいの猫も
黙って日溜りに揺れているだけだったから
けれど僕は
正直者ではない
誠実さの欠片もない
僕を信じているのは僕だけで
時計の針に怯えて
只管の外灯の温もりを
甘んじて享受する術を持った小人だ
と
分析していたとき
鉛筆を走らせる音に混じって
ブラジルに雨が降ったのだった
2年後
僕らは互いに
なし崩し的に
敬意を持って
車前を踏み散らしながら
アルプススタンドの端で
声を枯らしながら
過去を吐瀉塗れにした
濡れたパーカーは投げた
9回裏は信じられなかった
信じてもいなかったものに裏切られた
小麦粉と水を中途半端に混ぜたような感情が
土足で踏み入れてくるのを許してしまった
笑いたい
笑いたい
笑っていた
笑う
笑ってしまった
笑い合ってしまった
涙もついでに流れた
笑え
もっと笑え
笑う
もっと早く笑う
笑い合ってしまっていた
これは そうでしかなかった
嬉しい
溜息と共に
これからが入り込んでくる目眩がきた
クラクラする
手と手が結ばれる
感情線がギザギザの手が
神経を愛撫する
小指の先には
いつまでも自分らしさが構えている
しかし白球に祈りを捧げても
無神論者の神はこともなげに
否決した
チクリと針が小窓を刺す
「アイガーリー」
歓声の中で
それだけが聞こえた
笑っていた
笑ってみませんか
君は去れども