日本対ベルギー戦を終えて〜ビューティフルルーザー〜
勝てるとは思っていなかった。
けれど、こんなに善戦するとは…
誰がこんな日本代表を想像しただろうか。
いや、もしかすると日本の大多数の人間が見たかった一時の夢なのかも知れない。
結果から言えば、
ベルギーの個に頼った戦術もクソもないパワープレーに負けた。
サッカーが出来ていたのは紛れもなく日本だったと、世界中が認めている。
チームとして、
ベルギーが嫌いでも日本が好きでもなく、
なんなら推しはクロアチアだが、
開始数分で分かった。
日本のプレッシングやビルドアップは、
力強く丁寧で、
四年前の相手をリスペクトし過ぎる萎縮した日本はそこにはいなかった。
FIFAランクというモノサシだけで判断すれば約20倍の戦力差の相手を前にして、
鉄のカーテンを敷く事もなく、
タフな試合をしていた。
これが数ヶ月前まで61位のチームの試合だっただろうか。
ハリル体制の時にはダブルボランチはカミカゼ脳筋ボールハンターで長谷部がいつもケツ拭きをしていた。
いくら整える事が得意な長谷部でもお手上げな中盤だった。
ボランチの一枠を遠藤引退以来空いたゲームメーカー役で柴崎が埋めた事と、
うどんがKAGAWAに覚醒。
更にセレッソ時代からの盟友でバルサから2点とった円熟ドリブラー乾、
献身的にサイドを上下動できる原口、
ネイマールさえ止める酒井、
行く先々で慕われるコミュ力お化け長友、
プレミアで地位を築いた吉田。
本田は、……まじケイスケホンダ。
役者がそろい、
システムも4231。
ブラジルの時とは違う、
単なるベスメンを並べただけのチームでない事は、パラグアイ戦で証明した。
3バックにした時は、
流石にフランクフルトに寄せ過ぎと思ったが、しっかり適材適所に配置したと思う。
時間さえあれば、それも面白いシステムではあったが、ザックでさえ諦めたのだから、却下は妥当だっただろう。
人選は高齢JAPANと揶揄されもしたが、
修羅場を幾度もくぐってきた経験値には、能力だけでは太刀打ちできなかったのではないか?
自分より遥かに上手い選手の中で揉まれた猛者より勝る選手などいない。
試合内容はもう細かく言う必要は無いだろう。
90分火事場の何とやらで走り過ぎてへばり倒していた。
勝てるとすればPK次第な所もあったが、
あの高速カウンターは止められようも無い。
ドラマとしては正に完璧なカタストロフであったし、花は散るから美しいといったもののアワレさは如何にも日本らしい散り方であった。
壮絶な打ち合いと各所で話題にあがるが、
個人的には、ボクシングの殴り合いの様な感じでなく、真剣の居合いの様な試合であったと思う。
お互いがジリジリと冷静に勝機を伺い、
刹那、94分のベルギーの一太刀。
先に剣を出した日本が、かわされ、
カウンターで斬られる。
そんな所を想像してしまった。
これまでの流れを見るに、
電撃解任、二戦負け、色んな負の要素で、
自らをどんどん逆境に追いやり、
挑戦者の気概で、チームを一枚岩にしたからこそ、
組織として強固なものになり、
今回の試合まで行けたのでは無いかと思う。
日本代表全員がケイスケホンダ化したのかもしれない。
空気という科学的で無い抽象的な表現でしかないが、
ハリルの時はとにかく歯車が噛み合ってない気がして、空気も悪そうだった。
西野監督に変わってからは、
実際には3戦目からだが、
たしかに空気が明るくなった気がした。
実際に長友の髪の毛は明るくなっていた。
あのムードを戦略的に作り上げたのであれば、代表各関係者とメディアによるものだろう。
結局西野監督の今回の手腕は、
選手の能力ありきで、
再現性がないとの見方もあるが、
もう一つ抽象化して、
ベースとなる選手を選び、戦術などの側も当てはめる。
そしてそれぞれのパーツを適選していく、
というスキームがあったので、
これは考え方としての再現性はあると思う。
結局人ありきなのはどこも同じ。
ハリルはトップダウン方式で、
チームとしての結束を高めたのではないか?
なんにせよ、
今回の結果だけを見れば確かに一勝一分二敗。
その一勝も相手が10人だったからという厳しい見方もある。
いや、ワールドカップ優勝を本当に目指すのであれば程遠い結果である。
だが、
未来の日本代表に僅かな希望を与えたことだけは確かではないか。
四年後、カタールでは、
期待の新星が丁度良い年齢になっている。
少しだけ期待してみてもいいのではないだろうか?