手を繋いで文化は廻る

世界のあらゆる文化は須く全て繋がっている。それらは互いに手を取り合い、共存共栄し、高めあい、人々をより豊かにする。私は自身が得た文化の一端を伝えていく事でその一助となりたい。

MENU

2064

f:id:rikiyafrt:20200618035406p:plain

 

「2064」

 

艶やかな銃声

おでんの大根を口に含むと

辛子のツンとした香りが

鼻腔の奥を抜けていく

その最中に思い出す

 

第四隊の仲間には

しばらく連絡をとっていない

ちりじりになって

凡ゆる苦悩と反吐を共にして

蒟蒻をつつくと思い出す

 

榴弾のピンを集めるのが癖の

中山は

45日目のパレスチナで死んだ

 

一番仲が良かった

土嚢に連なって

放物線の先を笑い合った

 

狂気を共有して

 

少ない食料を分け合った

 

あいつの眼鏡は

どうして丸かったのだろう

 

記憶の中では笑っている

 けれど

本当に笑っていただろうか

 

ベルトに通した手榴弾のピンが

パンクスを思わせた

中山は最後に殺せと泣いた

 

玉子の黄身をつゆに溶かす

混濁した生命の足跡

ワルツ

燕尾服は千切れ

金の為の機械

ドレスの中の戦争

 

荘厳な旋律にはいつも

悲劇がついてくる

和やかな景色も

黄土色の飛沫に染まる

 

土鍋の廻りを

雄叫びが燃え盛り

青も赤も緑もばら撒いて

ゴポゴポと破裂音を散らす

 

「弱火にしてください」

とAIが告げる

 

その途端衝動的に

 

自動拳銃を撃とうとしたが

 撃てなかった

  撃つことを許されなかった

 

焔は燃え続け

鍋は空炊きしていた

 

煙が立ち込める

ギラリとひかる眼

2064日目の朝