【散文詩】蝉の抜け殻
怪訝な表情を見せる蝉の抜け殻
背中の割れ目 空洞
地面と皮一枚で繋がっているそれは
薄紅色のしゃぼん玉で遠い夜空に訳なく揺蕩う
いや、訳は限りなく有るはずであり、
それはまた彼方の国の中にも同じように存在するのだろう
空爆降り注ぐ最中
吾亦紅探しに行く狐
五反田の駅で乗り換えて
首にぶら下げた拒否権を投げ下ろす
切手貼った手榴弾を赤ポストに入れると
丁半博打と葦の茂るトタン屋根の往来を抜ける
リコーダーの下段だらけの波打ち際
今際に置いてきた鉄格子
真空を追いやる片目の男は
フレキシブルに印籠を翳す
言葉の端っこに嫌味を残す癖がある
四畳半に馬鈴薯を敷き詰めて
転げ回る遊びを発明したのは彼だ
天体の中に一層の
塩を見つけるのはもっと先の話だが
九十九里浜から一里離れると
どこが百里浜になるのか
はたまた九十八里浜はどこか
そんな思考概念から
ざっと500マイル離れたところで
72ポンドを46フィートでCすると
相対的に明日は晴れになる仕組みをPとする
鈍色の手をかざして作るピンホールライト
光子を目玉に取り入れる前に
脚立がリッケンバッカーの頭上を通り越し
十八・七弦の張られたペグを3回転半緩める
昨日のPによって
明々後日のアルメニアは大気圏を超える
鋒がギラついて蒙昧が晶出する
産み出した小鴉にペンネと名付けると
明くる日には何処にも居なくなっていた
怪訝な表情を見せる蝉の抜け殻
その背中の割れ目 宇宙