【詩】縦
「縦」
半径一メートルの円筒
アクリル樹脂
に指紋を貼り付ける
真下は透けて底知れない
真上の奥には楕円が二つ並ぶ
声は届かず
一切の闇
二百もの黒が声を喰い
波に浮かぶ言葉は
私の中を溶かすように淫ら
指の感触は優しい
涙の伝うのは優しい
舌を動かして歯に当てるのも
視界の下端の鼻先も
無重力で屈伸するのも
はたから覗くと
糸のようだった
絹 レーヨン ワイヤー デジタル
赤外線 登り棒 関係性 罠
ライオン 思念 会合 海鼠
寿限無 家 techno 緯度
刺 近藤勇 南蛮刀 こけら落とし
葺
なんだっていい
物質より
物質的な
非現実の実像的
のようなもの
諦観?
時の流れの遅さに
まばたきは億劫
ともすれば自由で
外は歪み
横は一次元を茂らし
喘ぎ声の彼方で
トマトのようなトマトを
鍋のような鍋に放り込む
五百年後も私は此処に居て
千年前も私は此処に居た
生命の抜き差しで
パスワードを忘れてしまうまで
縦
今日も凛と立つ
縦とは何か
吐く息の白きか