あぁ、私と関わり合うことのない今今すれ違う女性たちよ
あぁ、私と関わり合うことのない今今すれ違う女性たちよ、
君達は可愛らしい。
心を通わす機会も無く、
ただ各々が自分の人生と言う映画の主役で、
それ以外は端役であるように、
私達はすれ違う事でしかもう其々の人生での僅かな接点は得られない。
もう顔も忘れてしまった。髪型も。服装も。印象も。乗っていた自転車の色も。
可愛らしかったかどうかさえも。
そうやって私も、すれ違った数秒後には端役目を終え、
取るに足らぬ背景に紛れ、
何なら端役さえも与えられず、
脳内メモリの一時記憶にすら残らず、
ポートレートのボカし側にいて君達のフィルムに紛れ込むくらいが関の山の、
ミクロもマクロもクソもない接点しか与えられない。
だが私は、それはなんだか面白味がない気がするのだ。
だからこそ私は、
君達をほんの一時でも覚えておくことにする。
君達の可愛さ、若々しさ、蠱惑的な色香を、
服の上からでも分かるヴォリュームを、艶かしいほっそりとした脚を。
本当に刹那、自分の脳内メモリに通し、脳みそで数回咀嚼した後、
ゴミ箱に入れられる。
もうこれ以上、何も始まる事は無い。
あぁ、私と関わり合うことのない今今すれ違う女性たちよ、
君達は可愛らしい。